盗撮行為には依存性があるといわれる。スマートフォンの無音カメラアプリや、超小型カメラの普及が犯行に拍車をかける。被害拡大を受けて性的部位や下着の盗撮を罰する「性的姿態撮影罪」も新設されたが、いったんネットに出回れば完全に削除するのは不可能。卑劣極まりない犯罪だが、対策は一筋縄には行かない。
「それを思うと、癖になりやめられなかった」
昨年6月、JR大阪駅(大阪市北区)のホームで10代女性のスカート内を盗撮したとして、大阪府警曽根崎署に摘発された男(34)は、盗撮によって満たされる4つの感情について、とうとうと語った。
「ターゲットを選んでいるときの高揚感、近づき盗撮するときの緊張感、ばれずに成功したときの達成感、やってはいけないことをしている背徳感です」
捜査関係者によれば、こうした心境は盗撮犯の多くに共通。「自宅で再生し、自分だけが見られる」とさらに「優越感」を強調する者もいる。
警察庁によると、令和4年の盗撮犯の検挙件数は5737件で過去最多だったが、統計上の被害は氷山の一角だ。
盗撮犯の8割近くがスマホを用い、トイレや更衣室のほか、駅構内の階段やエスカレーターでの被害も目立つ。
常習性も顕著で、同じJR大阪駅のエスカレーターで女性のスカート内を盗撮して摘発された20代の男は多数の動画を所持し、「400人くらいの女性のスカート内を盗撮した」と供述した。
中には金銭的な収益を得るために盗撮を行うケースもある。6月、女性110人のスカート内を盗撮したとして京都地裁で有罪判決を言い渡された男は、ここ数年、盗撮動画を販売することで生計を立てており、ネット上で「カリスマ撮り師」と騒がれていた。
依存症治療を専門に行うひがし布施クリニック(大阪府東大阪市)の野田哲朗院長は「盗撮は窃視障害とも言われ、自己の満足や快感を得るために他者に危害を加えてしまうパラフィリア(性的倒錯)に分類される」と説明。「社会的立場を失うリスクは理解しても、欲求が勝ってしまう。中には性的興奮を覚えなくても、盗撮自体が目的となっている人もいる」とその深刻さを指摘した。