お通しの男

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お通しの男

『Sになって。こっちは金払ってるんだからさ。』

プレイが開始されるなり、そう言われた。

当時所属していたお店はSM店ではなく、

なんなら私はMなのでどうしたらよいかわからず困惑した。

それでもお金を払ってもらっているし

困った顔をするわけにもフリーズするわけにはいかない。

そう、私はプロフェッショナル。

走りながら考えることにした。

もとい、しごきながら考えることにした。

とりあえずビール、のノリで

四つん這いにさせてち〇こをしごいてたら、

1分も経たずにそのお客さんは果ててしまった。

走りながら考えるつもりだったのに、

考える前に終わってしまった。

ビールで終えてしまった。

まだつまみに手を付けてすらいねぇ。

なんならお通し以外まだ届いてもいねぇ。

SMごっこをやる意味あったのだろうか?

いや、走りながらのつもりでさせた四つん這いが、ドハマりしたのか。

それとも私の、自分も気が付いていないSがいかんなく発揮されたのか。

いずれにしてもしっかり満足はしてくれたようで、

たっぷり余った時間は楽しくおしゃべりをして終わった。

注文した料理に手を付けるどころか届いてもいないうちに終わったので、

お通し男として私の中で記憶されている。

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