ギャンブルマダム Ⅷ

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ギャンブルマダム Ⅷ

                
             Mとの別れ

「金づちで殴られてるみたいだべ」

Mはリビングのソファに横になって
叫んでいたらしい。
そのうち意識が無くなっていき、一緒にいたマスターが
慌てて救急車を呼んだ。
しかし病院に到着する前にMの命の灯はこと切れてしまった。

マスターの弁である。
Mの病名はくも膜下出血。
ストレスの蓄積が原因だったのだろうか。
葬式あとも店は営業していたが
マスターは抜け殻のようで覇気がなかった。
私は辛くてしだいに店から遠ざかった。
そして北海道に越して東北をオサラバした。

          
            北海道の雀荘

北海道ではいろいろなフリー雀荘巡りをした。
しかし東北のFのような家庭の匂いがする店は見つからない。
仕方なく比較的健全そうなPに通うことに。
Pのマスターはカルチャーセンターの講師も兼任していた。
ある日彼から頼まれたのだ。
教室のアシスタントをしないかと。
マージャンは卓を四人囲むのだが、生徒さんは役や点数や府計算にうとい。
だからマスターひとりでは間に合わないのだ。
だからか自分に声がかかったのだと思う。
ひと月に二、三回程度だし快諾。

凄く勉強になった、というのが実感である。

            麻雀の経験値

あとで私はなりゆきでバーのママをすることになるが
そのあたりを仕切っている居酒屋のマスターに挨拶をしにいった。
店の奥には一台の雀卓が置かれている。
聞けば、店のマスターやママが時々打っているとのこと。
「麻雀できるのかい?」
「すこしは」
「じゃあ今度やろう」
という、やりとりで私の居酒屋麻雀が開始された。

マスターが予想していたより自分は打てたと思う。
が、あるスナックのマスターが周囲に注意されても
やたら早ツモをするのでイライラしてきた。
ポンやチーのタイミングが狂ってくるのだ。
自分は新参なのに本人にたしなめた。
「お金を賭けてるんだからルールまもりましょうよ」
しかし彼の癖はやまらない。
自分の我慢も限界だ。
早ツモマスターが入らない時だけ打つことにした。

あの居酒屋も私の店も今はもうない。

                        (つづく)

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