ギャンブルマダム Ⅴ
スロットル
Kはせっかく見つけた中華料理屋の厨房の仕事をすぐ辞めてしまった。
理由は
「油がはねて火傷したし、厨房がすごく汚い」
「料理を作る気しないし客にいい加減なモノ出すのも悪いから」
それで別の仕事を捜すのかと思ったら
「今は違うパチ屋で沖スロやってるの」
「パチンコよりスロットル面白いよ～大勝ちできるし」
とKは意気揚々にのたまう。
私は目押しができないからスロットルはしない。
彼女は出来たのだろうか？
それより生活費は大丈夫なのだろうか？
社会人の娘さんが補填しているらしいが。
しかし他人のプライベートに首を突っ込みすぎるのも
どうかと思ったのでやり過ごした。
K 倒れる
電話で話してもＫのイライラや焦りが伝わってくるようになる。
おそらく沖スロの結果が良くないのだろう。
しだいにパチ屋の話題もお互い避ける。
私はしばらくKに連絡を遠慮した。
突然Ｋの娘さんから電話が来た。
「お母さんがトイレで倒れて入院しました」
「意識不明だから電話通じなくて心配させたらと思って」
Ｋの病名は心筋梗塞。
このあと三年間植物人間の状態で入院し、ついには目覚めなかった。
（つづく）
