闘病マダム Ⅶ

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闘病マダム Ⅶ

               嬉し恥ずかし オフロ

入院してひとつきくらい?
始めてお湯に浸かれる日が来た。
それまでタオルで体を拭くことしか出来なかったので凄く嬉しい。
車椅子で看護士さんに付き添ってもらい風呂場に行く。
脱衣を手伝ってもらい体をなんとか一人で洗う。
自分で洗いにくい背中は、看護士さんに時々流してもらう。
そして浴槽へ。
いい湯だなあ、と極楽の五分間。

ところがだ!
いつも女性なのに男性の介護士さんが手伝いをしに現れたのだ。
あの時は恥ずかしいというか気まずかった。

「どこか洗いましょうか?」
自分よりずっと若い介護士さんに聞かれても
つっけんどんに「離れて見守ってるだけで大丈夫ですから」と答えるしかできない私。
心は羞恥心のある乙女なのだ。

              外の世界

ようやく散歩が許可されて病院の建物から出られる日が来た。
それは屋上みたいな敷地?あるいは病院の周囲一巡りだがトレーナーが付き添ってくれる。
季節は年が明けた真冬、寒かった。
屋上にはいろいろな植物があった。
その中の赤いローズマリーの木は良い香りを放っていた。

トレーナーの男性が言う。
「寒くないですか?」
私は答える。
「女体が寒いです」
いつも同じ会話をしていた、漫才のように。

そうこうするうちに血管を拡張するカテーテル手術をすることになった。

                           (つづく)

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