立民が失った結党時の気概。岸田軍拡の容認で瀕死のリベラル政党
このところ、立憲民主党の幹部級と意見交換する機会が何度かあったが、その結果、衆院97、参院40の議席を持つ野党第一党である同党は、岸田内閣の防衛費倍増による大軍拡路線と正面切って対決し、それを阻止する気概を持ち合わせていないことがはっきりした。
これは相当絶望的な状況で、岸田大軍拡に正面から反対する組織政党は共産党だけになってしまい、その勢力は衆院10、参院11議席。れいわと参院の沖縄会派を加えても13、17。その共産党も、2人のベテラン党員の党を思えばこその提言を「反共キャンペーン」とか「外からの攻撃」とか罵倒して除名処分にするという愚行によって自損し、党内に動揺が生じ支持層が離れつつある中で踏ん張りが利かなくなっていることを考慮すれば、すでに国会は大政翼賛会的な様相呈していて、全議席のわずか4~5%程度の反対派を苦もなく蹴散らして大軍拡に進んでいくのである。
もはや「分裂」しか残されていない立憲民主党を全滅から救う道
この状況に歯止めをかけるまでには至らないとしても、多少ともブレーキをかける手段があるとすると、立憲民主党を大軍拡賛成もしくは容認派と反対派とに分裂させることだろう。もちろん思想信条や政策の違いだけで野党第一党から離脱するのは議員個人にとって容易なことではなく、数十名の塊にしかならないかもしれない。しかしその明快な主張を持った政治的な塊がなければ共産党及びその他の弱小会派との共同戦線を形成することが出来ない。
逆にそれがあれば、とりあえず共産党が孤立化し衰退化するのに多少とも歯止めをかけて、共同戦線を張り直すことが出来るかもしれない。その下で、院内協力だけでなく、市民・労組レベルの共同行動、その延長での選挙協力、さらに連立政権構想の描出を進めなければならない。
忘れ去られた「2015年安保法制反対闘争」という原点
今の立憲民主党の中心にいる皆さんはどうもそう思っていないようだが、同党の原点は2015年安保法制反対の戦いにある。
院内では、岡田克也代表の民主党を中心に、江田憲司らの維新の党、共産党、社民党、山本太郎らの生活の党などが共闘し、院外では民主・社民両党を支持する自治労、日教組など旧総評系労組の平和・反核運動組織「平和フォーラム」と、共産党系の「9条の会」など平和団体や労組とが連携して国会包囲デモを盛り上げた。これを通じて民主党と維新の党は接近し、16年に合流し民進党となった。
同党の代表が岡田から蓮舫、前原誠司へと変転する間に、しかし、細野豪志や長島昭久など共産党との野党協力を嫌う超保守系を中心に離党者が続出し、展望を見失った前原は17年10月の総選挙目前に、民進を丸ごと、小池百合子が作った「希望の党」に合流させるという精神錯乱的方針を打ち出した。ところが小池は、民進のリベラル色の強い者や民主党政権の中枢を担った者などを排除する方針を表明。そのため民進は、リベラルの旗を下ろすまいとする枝野幸男の「立憲民主党」、それと一緒になることを躊躇う岡田や野田佳彦などの「無所属の会」、それでも何でも「希望」に行って小池の懐に抱かれたかった前原や玉木雄一郎らに3分解してしまった。