世の中を動かしているもの
五十路半ばになり、最近やっと飲み込めるようになった現実の理がある。それは、世の中は善悪で動かないということ。
じゃあ、なんで動いているかというと、好き嫌い、そして損得だ。好き嫌いと損得の波にうまく乗れる人を、世渡り上手というらしい。
本物の波にも浮世の波にもまったく乗れなかった私は、よく波に襲われて喘いでいた。
それでも、この歳になるまで溺れずになんとか、海に漂っているということは、知らず知らずのうちに波に飲みこまれない場所を見つけられていたようだ。
もしかしたら、敵だと思っていた波は、私を本当の目的の場所に連れて行ってくれる船だったのかもしれない。
まだ、本当の場所にはたどり着けていないけれど、うっすらとその影は見えてきたような気がする。
今、海は少し凪っているけれど、いつ大波がくるかわからない。大波が来た時に波にうまく乗れる私でいたい。
とはいえこれからの世の中は、波に乗るだけでは渡っていけそうにない。波をうまく渡るためのオールが必要だ。
海が凪っているうちに、自分に持てない丈夫なオールを見つけなければと思う。