松江市の住宅街で「法事ぱん」と書かれたのれんを掲げてあるパン屋「パンェブール」を訪ねた。
この店で20年近く働いているという筒井恵子さんが店の奥で手際よく袋詰めしていたのは、焼きたてのあんパン。袋にはハスの葉が描かれている。
「あんパンは店頭に並べるものと同じもの。専用の袋で包装し、箱詰めしてお渡しします」と筒井さん。7個を箱に詰め、翌日の法要で寺に持っていくという女性の来店を待った。
店長の桑原智栄子さん(71)によると、島根ではあんパンを箱に詰め、法事に集まった親族らに「お返し」として1箱ずつ渡すのが習わしという。「近年はメロンパンやジャムパンなども一緒に詰め合わせることが多くなった」
法事は土、日曜日に開かれることが多い。松江市役所近くにある大正期創業のパン屋「パンタグラフ」では、週末が近づくと1件あたり10箱単位で注文が入ってくる。島貫宏次社長(44)は「週末は法事パン作りで忙しい」と話す。
パン屋だけでなく、県内各地のスーパーでも法事パンは取り扱っている。
島根県出雲市のパン製造会社「なんぽうパン」は、春・秋のお彼岸やお盆に、あんパンやジャムパンなどをハスの葉の絵柄がついた袋で個装し、スーパーに納める。特設コーナーに積まれ、年間で4万個ほど売れるのだという。
法事パンの風習は隣県にも
なぜ法事パンは広まったのか…(以下有料版で,残り932文字)