<調達見送りでUS-2撤退も>
防衛省が2023から27年度までの防衛力整備計画を策定した昨年12月以降、米金利の先高観から円相場は1ドル=150円へ1割下落した。計画1年目こそ前提レートを1ドル=137円としたが、2年目以降は22年度の政府公式レート108円を使って予算を積み上げた。
43兆円の防衛費は、ドルベースだと3割以上消失する。政府や防衛産業の関係者8人によると、防衛省は予算全体が目減りする中で調達に優先順位をつけ始めた。敵基地攻撃にも使える長距離ミサイルの量産やイージス艦の建造、F35戦闘機や弾薬などを先にそろえ、整備を急がないと判断した装備は削減あるいは先送りしつつある。
調達の検討過程を知る関係者2人によると、防衛省は計画2年目の24年度に輸送ヘリコプター「CH-47」を34機まとめ買いする考えだったが、円安や機体改良によるコスト上昇で単価が147億円から約200億円に膨らんだため、8月の来年度概算要求で半分の17機に減らした。
米ボーイングが開発した同ヘリは部品の多くを米国から輸入し、川崎重工業が国内で組み立てる。「円安による値上がりが価格上昇要因のおよそ半分」と、関係者の1人は説明する。「残りの機数(の調達)は27年度までの計画期間中には難しい」と、同関係者は言う。
別の関係者2人によると、防衛省は24、25年度に1機ずつ検討していた新明和工業の救難飛行艇「US-2」の取得も見送った。前回調達した際の価格は190億円だったが、新明和の関係者によると、同社は防衛省に24年度300億円、25年度700億円で単価を提示した。
値上げの要因は円安と部材高。さらに同関係者によると、胴体と翼をそれぞれ供給する川崎重工と三菱重工業がUSー2の事業から手を引くと決めたことも見積もり額の引き上げにつながった。同機は海上自衛隊が数年に1度しか発注せず、以前から採算が合わないと指摘されてきた。同関係者は「このままだと撤退が視野に入る」と話す。
防衛省はロイターの取材に、「24年度に真に取得する必要のある機数を検討の上、(CH-47)計17機の取得経費を計上した」と説明。「効率化・合理化を図るべく、(残りの)取得方法を引き続き検討していく」とした。US-2については、再来年度以降に引き続き検討するという。
川崎重工は「調達機数が予定より減ったことも(CH-47の)値上がりの理由」に挙げ、「(5年計画で)示された調達数量の実現をお願いしたい」とした。
新明和は「サプライヤーの理解・協力が得られなければ当社単独で(US-2の)製造能力を維持するのは困難」と回答。生産設備の稼働しない期間が長引く場合、「防衛省の意向を確認した上で具体的な対応策を検討することになる」とした。
川崎重工、三菱重工とも、US-2の生産協力から撤退を決めたかどうかのコメントを控えた。