政府は13日、イスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘激化を受け、出国希望者向けのチャーター機1便を手配したと発表。イスラエル中部のテルアビブの国際空港を現地時間14日に出発し、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイに同日到着した。
しかし、搭乗した邦人は8人にとどまり、一部報道で「自己負担が3万円で行き先がドバイまでであることに不満が出ている」などと伝えられると、SNS上では「せこすぎる」などと日本政府への批判が噴出。韓国軍の輸送機が14日、空き座席に邦人51人を乗せて無料でイスラエルからソウルまで輸送したことも、日本政府への批判に拍車をかけた。
立憲民主党の泉健太代表は15日、自身のX(ツイッター)に「日本政府のチャーター機。日本人8人を乗せ、有料でドバイ着。韓国政府の輸送機。韓国民だけでなく日本人51人を乗せ、無料で韓国着」と投稿し、暗に日本政府の対応を批判した。
外務省によると、事前に実施した意向調査では100人以上の搭乗希望が寄せられたことから、チャーター機派遣を決定し、200座席以上設置できる機種を仲介業者を通じて手配した。ただ、「中東地域のチャーター機需要が増し、刻一刻と状況が変わる」(同省関係者)ため、調査段階で行き先を明示しなかった。ドバイ行きに決まったのは「早期運航を優先した結果」(同)で、蓋(ふた)を開けたら8人だったという。同省幹部は「邦人退避は、その国から避難させるのが目的で日本に帰すことが目的ではない。8人でもやってよかった」と説明した。
なお搭乗者の費用負担について、日本政府は、商用便が運航している間は自己負担を原則としている。商用便を利用する人たちとの公平性を確保するためで、米英なども同様の対応をしている。テルアビブの国際空港は現在、平時に比べ便数が約4割減少しているものの発着が続いており、チャーター機はあくまで商用便の補完という位置づけだ。
ただし、過去には例外もある。政府は「内戦の発生や武力攻撃など、保護の観点から政府として退避をお願いせざるを得ない場合」や「チャーター機以外に移動手段がない場合」は公費負担すると説明してきた。イラクがクウェートに侵攻した1990年にイラクからチャーター機で退避させた際はすべて公費で賄った。
松野博一官房長官は16日の記者会見で、日本と韓国の対応の違いについて問われ「適切だったと考えている」と短く答えた。外務省関係者は「日本だけが『対応が遅い』と言われないよう急いだが、8人だけではかえって裏目に出てしまった」と肩を落とした。【畠山哲郎、川口峻】