ギャンブルマダム Ⅶ

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ギャンブルマダム Ⅶ

               雀荘 F

マージャン卓が四つほどの狭い店だった。
入り口側に流しやガスレンジ、冷蔵庫、簡易的な食器棚がある。
料理を作るスペースだ。
真ん中に卓が置かれ、奥にはソファ。
ゆうゆうと横たわって寝転べそうな長さだったと記憶。

50代くらいのマスターはよく背を向けて肘掛け椅子に座っていた。
奥さんのMはナースだったが本職が終わると
パチ屋さんか麻雀荘に行くのがほぼ日課。
マージャンの面子が足らないと駆り出されるが、たいてい彼らはメンバーだった。

マスターは麻雀がめっぽう強く、ひょうひょうとした男前。
奥さんのMは豆タヌキみたいに愛くるしく、すぐに私は彼らと仲良くなっていった。
つまり雀荘Fの常連になっていったのだ。

            Mの借金

しかしナースの本職があるとはいえギャンブル漬けの生活は
資金的に続かないようだった。
ある時マスターからMのパチンコ禁止を言い渡されている
場面に出くわした。
その際Mに借金があることを知ったのだ。
返済するために遠くの夜間病院でアルバイトを
するようになったMは
「疲れるし見回り怖い」が口癖に。

それから1年後彼女は倒れた。
自宅のリビングで。

                    
                          (つづく)

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